羅生門 デラックス版
羅生門 デラックス版
黒澤明
発売日:2002-09-06
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:12393
???時は平安時代、土砂降りの羅生門の下で、杣売り(志村喬)と旅法師、そして下人が、3日前に起きた不思議な話を語り始めて行く。検非違使(森雅之)が殺され、盗賊の多襄丸(三船敏郎)が逮捕されるが、彼と検非違使の妻・真砂(京マチ子)、さらにはイタコを使って冥界から呼び寄せた検非違使の霊と、それぞれ証言が異なっているのだ…。
???日本映画で初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞およびアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、一躍世界に黒澤明監督の名前をとどろかせた大傑作。人間のエゴ剥き出しの業の醜さと、そんな絶望の中からの再生といったテーマが、初めて太陽に直接キャメラを向けた画期的撮影や、ボレロ形式を主体とした斬新な音楽など見事なスタッフワークによって、躍動感みなぎる映像の美学として結実。キャストの名演も忘れてはならないところだ。原作は芥川龍之介の『薮の中』でその後も『暴行』『アイアン・メイズ』『薮の中』と繰り返しリメイクされ続けている。(的田也寸志)
★★★★☆ 2006-10-15 人とは?
とても変わった映画です。人間それぞれの特有として、自分の意見と言うものが一人一人違う、それが人間だと極端に表現した物語。最初見終わったあとあまり意味が分からず考えたのですが、実は日常でよく目にする光景だったりしますよね。仕事で自分がミスをしたとして、お互いに意思の疎通が出来てなかった為、本気で「相手が悪いのに、畜生」と思ってしまう。その人間同士の意思のすれ違いと言うテーマをはめ込んだ作品。う〜ん難しい
★★★★★ 2006-05-03 チャーチルは、この映画に何を見たか?−−この映画を生んだ日本と言ふ国の凄さ
以前、或る本で読んだ事であるが、イギリスの宰相チャーチルは、晩年、この映画(『羅生門』)を見たそうである。そして、その後、第二次大戦とその後の東欧の共産化を含む、20世紀の修羅場を目撃して来たこの政治家(チャーチル)は、こう言ったと言ふ。−−「この映画は、国際政治を皮肉った物ではないのか?」
チャーチルにこの様な言葉を言はせたこの映画(『羅生門』)と、その原作である芥川龍之介の『藪の中』の力は、矢張り、凄いと、私は、思ふ。(或いは、日本と言ふ国の凄さだろう。)
若い頃、初めてこの映画を見た時、私は、この映画のラストシーンに物足りなさを感じた。だが、私なりに人生の辛酸をなめ、世界に起こり続ける悲惨を見続けて来た今、私は、この映画のラストシーンを、本当に素晴らしいと思ふ。
(西岡昌紀・内科医/東京裁判が開廷した日に)
★★★★☆ 2006-01-07 モノクロなのに鮮やか、これぞ世界の「クロサワ」
日本映画初のヴェネチア映画祭金獅子賞、アカデミー特別賞に輝いたこの作品によって黒澤明監督は世界の「クロサワ」と呼ばれるようになりました。芥川龍之介の「薮の中」と「羅生門」を足して脚本化。タイトルは「羅生門」ですが内容はほとんど「薮の中」。三船敏郎の子供じみているが野性的な迫力。京マチ子のきちがいじみた妖艶な笑い声。志村喬のさりげない存在感。名優たちの熱演は現代をも圧倒するパワーを感じます。また、名カメラマン宮川一夫のカメラワークはいつ見てもドキッとします。たまに映し出される太陽や、豪雨の中にどんと立つ羅生門の姿は、モノクロなのに鮮やかで強い印象を与えてくれます。
★★★★☆ 2005-12-30 彼らは何故嘘をついたのか
盗賊と盗賊に殺された武士、その妻、それぞれが三者三様の嘘をつく、その心理描写が非常に興味深い。
自分を大きく見せるために、(他の二人と比べれば)ささやかな嘘を言う盗賊。男どもの関心を失い、過ぎ去られるぐらいなら、夫に蔑まれ、殺人の嫌疑を掛けられる方が良いと考える妻。そして、殺された武士は(巫女を通じ)、盗賊にくれてやっても惜しくない女のために殺された悔しさと自分の恥ずべき行為を隠さんがために最も事実とかけ離れた証言をする。旅法師の「死人が嘘を言うはずはない」との台詞は真に皮肉に聞こえる。
ただ、証言が食い違うことに対し、「人間なんて信じられない」と嘆く旅法師や杣売りは少しナイーブなのではないか。彼らが嘘をつく動機は非常に人間臭いし、現代の社会通念に照らして許し難いとも思われないからだ。それが(戦後60年から振り返ると)やや甘いラストの伏線になっているという気がしないでもない。
★★★★☆ 2005-09-26 以外な真実
原作の芥川の「薮の中」には真実は書かれていない。三人の言い分だけだ。
映画では「真実」が描かれているが、これこそが真実かと思わせるものだ。
ただ最後の場面の木樵や坊主のやりとりは、少し甘い結末に思えてしまう
のがちょっともの足りない。
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