野良犬
野良犬
黒澤明
発売日:2003-01-21
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:25022
★★★★★ 2006-08-22 実直っていいもんだ。
黒澤作品の中では、どちらかというと、マイナーな方に属する作品だろうが、私の中では現代劇では、「生きる」と並んで、大変印象に残っている作品である。
この作品をそれほどに際だたせているもの・・・、それはひとえに、主演の三船敏郎演ずる刑事の一途なまでの実直さであろう。
特に、時代は、実直というものの存在自体、許せないほどに荒廃した世相であり、それだけに、その時代の中で、敢えて、融通が利かないほどに実直であり続ける若き三船の姿は強く印象に残った。
見終えて、こう呟いたのを覚えている。
「実直っていいもんだよな。」と。
★★★★★ 2006-07-05 志村・三船見事な共演
戦後の日本を舞台に、コルト拳銃を盗まれた新米刑事(三船)とベテラン(志村)の暑い夏の日々を描く黒澤初期の傑作。志村、三船がほぼ同じスクリーンタイムを分け合っていて、二人のファンには嬉しい限り。己のコルトを求めてさまよう三船の姿の背景に流れる当時の日本。猥雑なまでのエネルギーと、戦後の虚無感が同時に感じられる凄い映像。そして二人の流す汗、汗。もはや凶器にさえなりそうな逃げ場のない暑さにいよいよ追い詰められていく三船。三船が最期に犯人の遊佐(木村功)を追い掛けるシーンは圧巻だ。丸腰で必死に追う三船。逃げる木村。二人は自然界と振興住宅地の出会う雑木林で格闘する。手錠をかけられ、号泣する木村。その絶望に呼応するように肩で息をする三船。このシーンはその後内外の監督たちにさぞやインスピレーションを与えたことだろうと察する。
若き日の三船がいい。そしてなにより志村がいい。愛と、突き放した人生観が見事に融合したベテラン刑事を説得力をもって演じきった。
★★★★★ 2006-06-19 雑木林に流れるソナチネ−−焼け跡に有った戦後への希望
私が、初めてこの映画を観たのは、18歳の時(1975年)の事である。東京のフィルム・センターで、この映画を観る為に、何時間も並んだ事が懐かしい。ビデオもDVDも無かった時代、昔の映画を観る事がどれだけ大変であったか、今の若い人には分からないかも知れない。しかし、だからこそ、何時間も並んだ後、フィルム・センターでこの映画(『野良犬』)を観た時の感動の大きさは、忘れられない物である。
この映画には、黒澤監督が、「戦後」と言ふ時代に対して抱いた希望が強く感じられる。戦争直後の荒廃した風景や世相を描きながら、この映画は、非常に明るく、笑いにも溢れて居る。当時の暗い世相の中に、これほど希望を感じさせる映画を作った処に、黒澤監督の強烈な個性を感じる。
黒澤明監督が、女を描くのが下手だったとは、良く言はれる事である。その指摘をあえて否定はしないが、この作品はどうだろうか?私は、『野良犬』に関する限り、その指摘は外れて居ると、思ふ。
「女を描くのが下手」と言はれた黒澤監督が、もっと描くのが不得手だったと私が思ふのは、貧しい人々である。−−黒澤監督は、社会の底辺に生きる人間を描く事は、不得手であったと、私は、思ふ。−−しかし、この作品では、それを感じない。この作品において、黒澤監督は、苦手な「女」を描く事にも、底辺の人々を描く事にも、成功して居る。
そして、クライマックスの決闘の場面で、雑木林に、突然、ソナチネが聞こえるあの場面は、何と素晴らしい物か。あの場面の衝撃は、忘れられない。
(西岡昌紀・内科医)
★★★★★ 2006-05-19 渋い!
この作品はストーリー的にも面白いし、志村さんが演じている佐藤刑事も渋くていいです。「酔いどれ天使」の真田には少し劣るけど、それでも十分魅力的です。
私的には黒澤作品で志村さんが演じた役の中では佐藤刑事は二番目にいい役だと思いました。
★★★★★ 2006-03-22 三船敏郎のかっこよさ
この映画の面白いところっていうか、三船敏郎の面白いところは、刑事のかっこうしているときより、復員兵の汚いかっこうしてる場面の方が似合っているし、かっこよく見えるところであろう。ストーリー自体もとても面白いし、展開もスピーディ。でも一番印象に残っているのは、三船のきったない復員兵姿のかっこよさ。不思議な役者だ。
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