白痴
白痴
黒澤明
発売日:2002-12-21
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:50791
???戦争のために精神に障害を受け、人から白痴と呼ばれるようになった無垢な男・亀田(森雅之)と、復員途中で知り合った金持ちの息子・赤間。なぜか気の合うふたりは赤間の故郷・札幌の写真館で、ふと美しい女性・妙子(原節子)の写真を見た。まもなく3人の、そして周囲をも巻き込む壮大なかつ赤裸々なドラマが始まる…。
???巨匠・黒澤明監督が、敬愛するロシアの文豪ドストエフスキー『白痴』を原作に、舞台を北海道に置き換えて演出した野心作。まるで北海道がロシアのように思えてくるほどの気品高い見事な雪の世界観の中、真に純粋で善良な者が白痴と称されてしまう病理的な社会に鋭いメスを入れている。なおこの作品は当初4時間25分で完成させたが、会社の要請で3時間に短縮して3日間ロードショー。その後の一般公開の際はさらに14分短縮され(このとき黒澤監督は「これ以上切るなら、フィルムを縦に切れ!」と激怒した)、残念ながら現在は公開時のプリントしか残っていない。(的田也寸志)
★★★★★ 2005-08-24 完全版が見たい!!2時間40分はこの映画には短すぎ!!
最近、三島由紀夫が主演した『憂国』の完全版フィルムが倉庫の奥で見つかったというニュースが新聞に載りましたが、この『白痴』にもそういう出来事が起こらないものでしょうか。
もとは4時間25分あったそうですが、やっぱりそうでしょうね。映画が始まってすぐに、黒地に白の縦書きの字幕でストーリーを説明する箇所が三箇所ぐらい出てくるのですが、こういう箇所もたぶん劇場公開するときにバッサリいかれてしまった部分なのでしょう。
もったいないですよね〜。実にもったいないです。こういう作品は短くしたらいけませんよ。完全版だったら、きっとあの左卜全だってもっと味のあるキャラクターとして登場していたはずなんです。このバージョンだと単なるチョイ役ですから。う〜ん、もったいない。
この映画は第一部の「愛と苦悩」と第二部の「恋と憎悪」という二部構成なのですが、それぞれの見所は、第一部はパーティー会場で亀田が原節子演じる妙子に「私があなたをもらいます」と告白するシーン、そして第二部は原節子と久我美子の女の精神戦ですね。派手なアクションなんかもちろんあるわけないのですが、最近のハリウッド映画なんか全く問題にしないこの息詰まる緊張感はものすごいです。
見たかったな〜、完全版…。悔やんでも悔やみきれないですが、文句無しの☆五つ。素晴らしい名画です!!
★★★★☆ 2004-10-24 舞台劇を見るような俳優たちの演技に注目!
三船敏郎、原節子、森雅之など当時の大スターを揃えた文芸大作。モノクロームの世界で繰り広げられる重厚感や、舞台劇を思わせる俳優の計算され尽くした演技は見るべきところが多い(森雅之は少々過剰すぎる気もしたが)。特に久我美子の「自分の美しさを十分に知っている気の強いお嬢さん」という役柄はハマリ過ぎと言ってよい。
ただ、室内劇の細やかな心理描写に重きを置いているため、ロケ地である北海道の雄大さが表現し切れていないのが残念なところ。また、必要以上のカットのせいかもしれないが、ストーリーを追いきれない部分があるのも気になる。
それにしても原節子と東山千栄子の役柄は、小津安二郎監督作品で見るイメージとはまことに対照的だ。ドラマ性を重視する黒澤と定点観測者の小津、両監督の個性の違いが垣間見えたようで面白かった。
★★★★★ 2004-03-13 大いなるアイロニー、そして監督の愛する人物像たち。
実は学生時代この映画で退屈した思い出があります。
今回もかなり気合入れて観ました。そして感想をどうしても書きたくなりました。
「素晴らしい」冷静に考えると「羅生門」と「生きる」の間の映画ですので悪いわけないんですが大映、松竹、東宝と映画会社が異なっているので並列的に観る機会がありませんでした。しかし、「真に善良的な人間を描くためには、その人物をこの映画の題名のような病状の人間にしなければならなかった」と監督がおっしゃっているように素直な人間だけが最後におかしくなっていきます。
第一部「愛と苦悩」のパーティーのシーン、まさに白眉の出来です。室内劇の素晴らしさ存分に発揮しております。そして第二部「恋と憎悪」ここで久我美子を待っているときの原節子の姿、とてつもない構図、すなわち、中央にステンドグラスをバックにマントの原節子、手前に画面を横切る形で三船敏郎が寝てます。顔を上げているので右下に男の顔、中央に女の顔という構図でバランスがすごくいいのです。バックに流れる音楽はイワノビッチの「ドナウの小波」最高のシーンです。このパーティーからこの女の対決まで、外は極寒の札幌の吹雪の動的な印象の中、登場人物の動きは対照的に静的に動きがなくその対比の見事さは感服します。そして、外の吹雪は登場人物の心のなかの情動的な激しさを示しています。このような対比を、映画自体は堂々としたリズムを崩さないで進行させた黒澤監督に敬意を表したいと思います。本当に素晴らしい。なまじ上記の作品の間に出来た映画ではないです。まさにこれらの映画に勝るとも劣らない傑作です。久我美子の映画の中での最後の言葉、かなり監督の想いが詰まっていると思います。冒頭にも書きましたが学生時代にはこの素晴らしさが私はわかりませんでした。今回は見終わって震えが止まりませんでした。感動にこれだけ包まれることはそんなにないのですがまさに感動的な映画です。
★★★★★ 2003-05-06 凄い ・・・・・
ただ一言、 凄い映画ですね。
終盤近く、 二人のヒロイン、 原節子と 久我美子の対決場面(本当に決闘する
わけではありませんが。) がありますが、 あまりの緊迫感に 鳥肌が立ちました。
★★★★★ 2003-02-09 森雅之と原節子!
本来、原作である小説と映画は別物と考えます。しかし、この作品に関しては、小説を読んでから映画を観た方が、長時間カットされた部分を頭の中で補え何倍も楽しめるのではないでしょうか(いきなり登場する左卜全は小説を読んでおくと思わずニヤリ)。
とにかく圧巻は森雅之と原節子!この二人の目は、映画の中の演技という範疇を超え、「崇高な魂」に限り無く近付き、観ているこちらが身震いさえ起こす程です。三船敏郎、久我美子も非凡、東山千栄子、千秋実も印象的。素晴らしいとしか言い様がありません。
ドストエフスキーの最上の映画化という評を目にしましたが、この作品を超えるものがあるとすれば、完全版の『白痴』しかないでしょう。
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