蜘蛛巣城
蜘蛛巣城
黒澤明
発売日:2002-11-21
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:13641
???時は戦国時代、武将・鷲津武時(三船敏郎)は、妻・浅茅(山田五十鈴)にそそのかされて主君を殺害し、その城主となるが、朝茅は次は親友の三木義明(千秋実)を殺害するよう強要する…。
???黒澤明監督が敬愛するシェークスピアの『マクベス』を戦国時代に翻案して描いた、幻想と恐怖に彩られた人間の業を露にする戦国絵巻。武時に謎の予言を伝える老婆(浪花千栄子)の不気味な幽玄性や、「森が動く」という台詞どおりに本当に森が動いたとばかりに驚嘆させる映像技術の素晴らしさ、そしてクライマックスでは、主人公に本当に無数の矢を射かけていくという、ダイナミズムを通り超えた恐怖の演出をも堪能できる。能を効果的に用いた佐藤勝の音楽も秀逸で、彼は本作から黒澤娯楽映画絶頂期の音楽をことごとく担当し続けることになった。(的田也寸志)
★★★★☆ 2006-10-15 ホラー
怖いです。黒澤映画で本格的なホラーはこれ一本だと思いますが、そのホラーと言うのも人間の醜さを集結させた様なお話。人間にとって一番怖いのは人間だと言わんばかりの流れでやられます。
★★★★★ 2006-09-27 シェイクスピア映画の最高峰−−無声映画の美しさに立ち戻った世界映画史上の傑作
シェイクスピアの『マクベス』を、黒澤明監督が、戦国時代の日本の物語に翻案した、世界映画史上に残る傑作である。この映画が、欧米で、どれだけ高い評価を受けたか、若い人達は知らないかも知れない。例えば、ロンドンに国立映画劇場が落成した時、イギリス人は、こけら落としに、黒澤監督を招いて、『蜘蛛巣城』を上映したのである。又、ピーター・ブルックは、コージンツェフの『ハムレット』と黒澤明の『蜘蛛巣城』を全世界で作られたシェイクスピア映画の最高峰だと言ひ切って居る。−−シェイクスピアの国の人々が、この映画に熱狂したのである。−−更には、スピルバーグなども『蜘蛛巣城』を絶賛して居る。
かつて、黒澤明監督は、『羅生門』を監督した頃の事を回顧して、自分は無声映画の美しさに戻りたかったのだ、と言ふ意味の発言をした事が有る。映画の原点である映像その物の美しさに戻りたかったと言ふ意味である。『蜘蛛巣城』には、『羅生門』以上に、そうした無声映画的な造形美が溢れて居る。−−雨の森、その雨の森で道に迷ふ馬と武者、そこに現れる妖怪、風にはためく旗、霧の中で動く森、そして、鷲津(三船敏郎)が矢を浴びるあの有名な場面、など、まさに無声映画の様な、映像その物の美が、極限まで高められた傑作である。佐藤勝の音楽も素晴らしい。メインタイトルに流れるあの笛の旋律は、日本の映画音楽史上に残る傑作である。私は、日本がこの映画を生んだ事を誇りに思ふ。
(西岡昌紀・内科医)
★★★★★ 2006-09-06 難しく無い話。
戦国の世を題材にした作品だからといって臆する必要が無い作品だ。内容はわかりやすく、人間のモロさが出ているところが黒澤映画の入りやすさでもある。冒頭の「大殿様」への戦況報告は、音声の悪さもあるが、何を言っているのかわからない。しかし、観ていくにつれ聞漏らしても問題無い「つくり」になっている。一方で、黒澤映画に限らず邦画によくみられることであるが、描写の生々しさを感じとれる。ここに生命感を見出すことも出来るであろうし、ものすごい恐ろしさを感じることもできる。ものすごい野外セットを含め、よくできている。エンターテインメントであることが前提としつつ、人間の欲深さに焦点をあてた秀作だ。
★★★★★ 2006-07-08 人間こそホラーかと
三船が霧深き蜘蛛手の森をさ迷うプロローグから、全身首までを矢に射抜かれて断末魔を迎えるエピローグまで、全編これ蜘蛛の巣でおおわれたようなこわーい映画。
三船は相変わらず上手いが、山田浅茅がいい。かすかな衣擦れの音と、エロチックな正調日本語で亭主をそそのかす存在感は忘れ難い。おなじみの「洗っても洗っても・・・」のシーンは、怖さも怖く、演技も素晴らしく、ニ重の意味で鳥肌が立つ。
「陰」の恐怖で終始した後、矢玉の雨という「陽」の恐怖で一挙に破滅へとなだれこむ。それまで息をつめて見ていた観客にある種の爽快感を味わわせて終わるはさすがプロの技。
雨のそぼ降る夜にでもゆっくりと御覧になってはいかがでしょうか。
★★★★★ 2005-09-26 マクベスを越えて
マクベスはシェークスピアの物語の中でも屈指の名作だと思うが、その原作のもの凄さに真っ向から太刀打ちできる作品を日本人が制作したというのが嬉しい。
三船はうってつけである。その猛将ぶり、妻にそそのかされて道を踏み外してゆく悲劇性といい、彼しか演じることはできないだろう。
山田五十鈴のねっとりとした凄みは原作のマクベス夫人より遥かに恐ろしさを含んでいた。
圧巻は三船演じる鷲津の最期。これは見なければわからない。
物を作るということへのエネルギーと精神の在り処を考えさせる。
こういうのを見ると、見る気を失う作品が増えて困る。
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