夢 Akira Kurosawa's DREAMS
夢 Akira Kurosawa's DREAMS
黒澤明
発売日:2003-12-06
おすすめ度 ★★★★☆
売り上げランキング:39587
???世界にその名を轟かせる真の巨匠・黒澤明監督が「こんな夢を見た」という書き出しから始める、「私」(寺尾聰)を主人公とした8つのファンタスティックな夢のオムニバス映画。製作にはスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが協力、また第5話にはゴッホ役でマーティン・スコセッシが出演している。
???黒澤自身の少年〜青年期を彷彿させる第1、2、3話、戦死者への哀悼の想いを込めた4話、画家を夢見た彼ならではのエピソード第5話。そして放射能に色をつけるという斬新なアイデアもさながら、現代の核問題危機を恐ろしいまでに先取りした第6話と、その後人類が鬼と化す7話。ついには、おごる文明を拒否し、自然と同化して生きる素晴らしさを訴える第8話へと至る。滅び行く日本の美、破壊されていく自然、そして核や戦争による滅亡の危機…。これらを回避するには、正義を貫く人間の謙虚な心しかないという、黒澤明自身の思想を夢という形で巧みに分散させた、真の映画的美しさに満ちた作品である。(的田也寸志)
★★★☆☆ 2004-09-17 映像美で見せる映画
・・・こんな夢を見た・・・
夏目漱石の『夢十夜』と同じ出だしで始まる八つの物語。
主に環境問題を中心にした物が多いが、他にも、自らの部下を戦争で死なせてしまった部隊長が死んでいった部下の兵隊達と語り合う第四話や、切られる運命にある桃の木がひな祭りの日に少年に見せる幻想的な世界を描いた一話目など、若い頃は画家を志していた黒澤の色彩感覚と芸術的センスが光る作品も収録されている。
黒澤が環境問題や戦争を取り扱った映画としては『生きものの記録』という水爆を主題にした作品や、広島の原爆をテーマにした『八月のラプソディー』があるが、本作でも黒澤は上述の二作品と同様の主張を繰り広げていると見てよいだろう。
若い頃から様々な社会派の作品を取っている黒澤だが、こういった戦争に関することを主題にすることが多いのは、やはり黒澤自身が戦争に従軍していないということと関係があるのかもしれない。
しかし、そういった強いテーマ性はあるものの、本作が映画としてその主題を適切に表現しているかというといまいち妖しいような気がする。確かに「自然を大切にしよう」とか「環境を守ろう」といった事を主張したいのだということは伝わってくるが、その伝え方があまりにもストレートで若干子供っぽい印象を持ってしまう。しかも、そういった単純な主張を繰り返し見せられることで、見ていて途中から何となく説教臭いような気がしてきてしまう。
年齢と言ってしまえばそれまでかもしれないが、天才黒澤もやはり年をとると説教くさくなるということなのだろうか。
★★☆☆☆ 2004-07-12 美しいのだが
黒澤晩年の作品は美しいが 本来彼の作品が持っていた脚本の面白さが無くなってしまっていると思うのは小生だけか?夢という作品は その脚本が脈絡もなく 本来であれば見るに耐えない作品かもしれないが それでも あえて言うなら それでも 嫌いではない。黒澤が絵描きでもあったことは知られているが その資質は十分出ていると思う。いくつかの場面での色使いはとても綺麗であり 思わず唸る場面だってたくさんあった。しかし 黒澤映画は基本的には白黒映画であり しかも 往年の彼の白黒映画が実に極彩色に見えたかを知っている小生としては やはり寂しいものがある。色に頼り始めたときに黒澤が衰えたということは 赤ひげとデルスウザーラを見比べた時に感じたが その直感は正しかったと思わざるを得ない。黒澤は 映画中のゴッホのように最後は狂ってしまったのかもしれない。但しゴッホのように狂人にしか見えない「美」を見据えていたのかもしれないと言ったら 贔屓すぎだろうか。
★★★★★ 2004-07-07 画家の環境問題啓発映画?
色彩は非常に美しいものの、ストーリーのテンポは遅くてちょっと退屈しました。
「夢」の世界を借りて、歴史を順にたどりながら
人間と環境との理想的な関係を追求した作品のように思えました。
第一話 動物と人間 狐の逢引きを覗いてはいけない
第二話 植物と人間 桃の木を切ってはいけない
第三話 雪山と人間 自然の脅威を侮ってはならない
第四話 戦争と人間 無念の死を遂げた兵士を中隊長がなだめる
第五話 文明と人間 蒸気機関車は産業革命の象徴?
第六話 原発 放射能に色を付けても「死神の名刺」と同じ
第七話 核戦争 鬼は苦しくても死なせてもらえない
第八話 理想郷 江戸時代のようなエコロジー社会
この価格なら、お子さんの教育のため(?)にも
一家のBGM(Back Ground Movie)としていかがでしょう?
★★★★★ 2004-06-26 詩的な世界
何が良かったのかと聞かれると具体的に述べる事は出来ませんが、現代と御伽の狭間を繰り返し漂っている様な瑞々しい感触が心地良い。個人的に「桃畑」が幻想的でとても良かったです。心にホロリときて繰り返し何度も見たくなる。こんなに感慨深い美しい夢って本当にあるのかな、あったら素敵だなぁと素直に頷ける作品でした。
★★★★☆ 2004-02-28 ゴッホに遭ったといわれても・・・
黒澤明の夢(妄想?)を映画化した画期的な作品。(有名な監督はこういうのやりたがるよね)幼少時代の狐の嫁入りは私もよく聞かされていた。場面は変わり桜か何かの花が舞い散るシーンは涙を流した記憶がある。そのくらい美しい。 未来は放射能で汚染されてみんな自殺したという暗い話だが、初めて黒澤が人間に絶望したシーンを撮ったなあと思った。ラストは爽やかに終わったのがよかった。
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