天国と地獄
天国と地獄
黒澤明
発売日:2003-02-21
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:6222
横浜の高台に豪邸を構える製靴会社重役(三船敏郎)の運転手の息子が、重役の息子と間違われて誘拐。犯人は3000万円を持って特急こだまに乗るよう命令するが…。
エド・マクベインのミステリ小説『キングの身代金』を、黒澤明監督が翻案して映画化した社会派サスペンス映画の金字塔。やがて人質は解放され、警察(仲代達矢ら)の必死の捜査が始まるにつれ、明らかになる誘拐犯(山崎努)の思想。地獄のような薄汚れた町から、天国のような高台の豪邸を見上げていた彼の屈折した思いが、とりかえしのつかない事件をうんでいくのだ。その意味では単なるサスペンス映画ではなく、人間の内面の業に鋭く迫った、黒澤映画ならではの味わいに満ち満ちている。モノクロ映像のなか、一瞬カラー着色がほどこされるショッキング・シーンは観てのお楽しみ。後に『踊る大捜査線』映画版で、このシーンがパロられていた。(的田也寸志)
★★★★★ 2006-10-15 本当の理を上げるよ
黒澤映画の中でトップ3に入ると思われるサスペンス超大作です。一番最初に寝ながら見てたのですが、所々の緊迫感に何度も起き上がり画面に食いついたのを覚えています。素で「面白い」とつぶやいたのも、覚えています。
★★★★★ 2006-04-08 豪邸は見事な位置に建ってます
基本は誘拐ものなんですが、
さまざまなドラマが絡んでいます。
・社長の息子と間違えて
運転手の息子を誘拐してしまったことを逆手に利用する犯人
・会社を乗っ取る為の資金であるなけなしの金を、
他人の子供の為に払わなくてはいけないという事に葛藤する
社長三船さん
・新幹線を使った巧妙な身代金受け渡しと警察の特殊行動
等々
犯人が特定されてからの展開も目が離せず面白いです
GS前夜、ウエスタンカーニバル後あたりの
ヤング音楽で踊り狂う場面も見逃せません
阿片窟のようなところで、
中毒者、禁断症状者、コールードターキー野郎
に威される場面は、
まるで「ナイト・オヴ・ザ・リヴィングデッド」のゆらゆらゾンビでした
ちょっと感動しました
最後の山崎努さんの独白も鬼気迫ってて凄いです。
伊丹作品で山崎さんの凄さはわかってましたが、
若い時から凄かったんだなとびっくりしました。
ハンサムなところもびっくりしました
この場面では
後ろ姿での三船さんのカットも効果的で印象に残ります
あと仲代達矢さんもかっこよかったです。
パトレイバーの後藤さんの元ネタがわかりました
押井さんの名作である映画の「パトレイバー」1&2には
この映画の影響あるのかな?
とも感じました。
風景や質感、捜査場面の雰囲気などがそっくりでした
(ちなみに「2」は物凄い映画。
警察と○衛隊による内乱シミュレーション!!
「1」も凄いです)
冒頭の邸でのシーンはまるで演劇。
惹き付けられます
原作はまだ読んでいないのですが
どこまでが原作なのか知りたいです
それにしてもあの豪邸は見事な位置に建ってます。
はじめから建っていたものだったとしたら驚きです。
とにかく傑作でした
ここ最近の現実の犯罪が酷すぎるし醜すぎるので
この映画の犯人が全然卑劣に思えなかった所が
現代の悲しいところです・・
★★★★★ 2006-03-18 人間の光と闇とエゴの果てにあるもの
黒澤明が誘拐事件を題材に、現代の人間の光と闇とエゴを描き上げた一本。
スリリングで先が予想できない展開は、時間を忘れて楽しむ事ができた。主人公の人物描写がはっきりしないのは、善悪に揺れる人間臭さを出した結果で、余計にリアル感が増したと感じられる。
「天国と地獄」というタイトルも絶妙だ。
★★★★★ 2006-02-22 超一流
銃撃戦とカーチェイスばかりの昨今の刑事物とは大違いの本格派。犯罪は時代を映す鏡であり、時代の色を決めるのは人間だから、真剣に取り組めばこの「天国と地獄」のような鬼気迫る人間ドラマになる、のは考えてみればあたりまえだろう。この映画で山崎努を初めて見た時、日本にもこういう屈折した役者がでたか、と驚いた。そのエリート意識と綯い交ぜになった劣等感、鬱屈した青春像は欧米の映画ではよく見られたが、日本ではなかなかお目にかからないものだった。この山崎努をはじめとして、黒澤さんのスタッフえらびの慧眼には驚く。この人の作品でミスキャストだと思った記憶がない。カメラも黒澤さんの第2の目のようだ。この映画を見ると、映画自体の出来のよさはもちろんのこと、超一流のスタッフが火花を散らしながら働いている現場の熱気までもが伝わってくるようで、ぐぐっと感極まってしまうのだ。
★★★★★ 2005-12-30 綿密に仕込まれた犯罪と映画
黒澤明という監督は愛や人情を主題に物語を創ると、「わが青春に悔いなし」、「赤ひげ」、「まあだだよ」などなど、単なる紋切り型のLOVEPOPな努力論やら農本主義に終始してしまう。それでも人間愛を描き続けたということは評価したいが、どうしても黒澤監督は人情を描いて小津監督の様にスンナリ観客を感動させるタイプではなかったように思う。
そんな黒澤監督だが、人間の苦悩や恐ろしさ悪知恵や天才的な遊び心を備えた超人などを描かせると右に出るものはいない。「羅生門」、「七人の侍」、「椿三十郎」、「隠し砦の三悪人」などと同様に、いやむしろ秀でて本作ではその強烈さやキメ細かさ、大胆さ、男のカッコよさ厭らしさが物の見事に描かれている。
首謀者は山崎努、ターゲットは三船敏郎、捜査隊長は仲代達矢、そしてそれらを取りか囲む実に芸達者な面々のさり気ない怪演。そして黒澤監督の鬼気迫る物語の運びや、大胆なカメラワークにて、2時間20分という長篇をまったく退屈することなく釘付け状態で終始することが出来た。黒澤明は本作の原作をアメリカの小説から引っ張ってきたらしいが、この上なく上等に演出し切っている。
久しぶりに文句無しにパワフルな傑作を観たという感で、とっても嬉しい気分になってしまった。また60年代の横浜をはじめ、湘南海岸線の景色が悠々と写し出されていて感動だった。例の如く、三船敏郎も仲代達矢も、そして若かりし頃の山崎努もカッコいいしね。香川京子もとっても綺麗。
余談ですが、警察の事件の捜査方法をここまで詳細に描いた日本映画は稀ではないでしょうか。
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