夢 Akira Kurosawa's DREAMS
夢 Akira Kurosawa's DREAMS
黒澤明
発売日:2002-12-20
おすすめ度 ★★★★★
売り上げランキング:26219
???世界にその名を轟かせる真の巨匠・黒澤明監督が「こんな夢を見た」という書き出しから始める、「私」(寺尾聰)を主人公とした8つのファンタスティックな夢のオムニバス映画。製作にはスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが協力、また第5話にはゴッホ役でマーティン・スコセッシが出演している。
???黒澤自身の少年〜青年期を彷彿させる第1、2、3話、戦死者への哀悼の想いを込めた4話、画家を夢見た彼ならではのエピソード第5話。そして放射能に色をつけるという斬新なアイデアもさながら、現代の核問題危機を恐ろしいまでに先取りした第6話と、その後人類が鬼と化す7話。ついには、おごる文明を拒否し、自然と同化して生きる素晴らしさを訴える第8話へと至る。滅び行く日本の美、破壊されていく自然、そして核や戦争による滅亡の危機…。これらを回避するには、正義を貫く人間の謙虚な心しかないという、黒澤明自身の思想を夢という形で巧みに分散させた、真の映画的美しさに満ちた作品である。(的田也寸志)
★★★★☆ 2006-01-11 深読みし過ぎ?
この映画は何度か見るうち、形式としてオムニバスであるが全て通して1つのストーリーなんじゃないか、という風にとれるようになった。
たしかに1つ1つの話でみると、ただ、自分の夢を映画化したに過ぎない。そんなはずないだろうと、私はある仮説を立てた。臭い話、このオムニバスのメインテーマは「生きる」ではないかな、って。
最初の2つ、 「 日照り雨」「桃畑」。この2つでは、子供が初めて、生や死に直面する場面を描いているんじゃないかと思った。
次の2つ 「雪あらし」「トンネル」。ここで表されているのは、生への執着。
次の3つ「鴉」「赤富士」「鬼哭」。ここでは生きる苦しみと生からの脱出。
そして最後に「水車のある村」の老人が言った一言。「正直、生きてるのは良いもんだよ」。
わたしが良いように解釈しただけなのかもしれないけど、人の一生の流れみたいなのを感じることができたように思う。
★★★★★ 2005-07-06 固まった。
オムニバス形式の映画。
狐の嫁入りを題材にした第一話。
その行列が行進する様子が、見てはいけないものを見てしまったという
強烈な思いの反面、固まってしまって目が離せない。
嫁入りの行列は粛々と進みながら、みなが一斉に狐らしい動きで
振り返ったり止まったり。
何か畏敬の念を抱かすような、人間と交わってはいけない世界が
そこにあります。
第二話。
桃の節句を祝う名家の子供と友人達。
そこに現れた謎の少女。
少年はその子を追って、伐採されたばかりの
桃の木に辿り着きます。
その少年を待ち構えていたように、突然雛人形が現れるのですが、
その登場の場面、なんてことはないのにゾっとするほど印象的。
その後、伐採を嘆いてくれていた少年の為に、雛人形達は優雅な舞を
見せてくれるのでした。
その他、雪女から逃れる話。
また、自分の戦死を自覚せず現れた部下と、生き長らえた上官とが
トンネルにて相対する話。トンネルから青白い顔をして軍靴をならして
出てくる部下達に英霊の姿を見ます。
まだまだ胸打つ短編が詰まっています。
ある程度大人になってから観て良かったと思った作品。
十代で観ていたら、映像美だけしか残らなかったかもしれません。
それから、スピルバーグに感謝。
★★★★★ 2005-06-22 心に深く残る映画でした
はじめてこの作品をみたのは、
別の映画で上書きされたビデオテープの最後に老人と寺尾聰が風車の村で
語り合う話だけが残っていたのを見つけたのがきっかけでした。
この話がとても気に入り、なんども繰り返し見ていました。
そして何年かたち、ようやくこれが黒澤明監督の映画だとわかりさっそくレンタル店を探して見てみました。
やはりどの話も本当に監督が見た夢のような世界で
ただ夢物語を表現しただけというものでもなく、
人間のちっぽけさを感じてしまうような感情に襲われていきました。
そしてやはり最後をしめくくるにはふさわしい老人との会話の回。
とてもこの映画の世界に惹かれてしまいました。
一般的に認知度の高い他の黒澤監督の映画と比べると異色なものになっていますが
この話はとても気に入っています。
★★★★☆ 2004-10-12 水車小屋の村
この作品に出てくる8つのエピソードで私が一番好きなのは一番最後の「水車小屋の村」である。このエピソードの水車小屋の村に出てくる老人(笠智衆)がしみじみ私(寺尾聡)に語る「本来、葬式は見出たい物だよ、よく生きて、よく働いてご苦労さんといわれて死ぬのは目出度い」というセリフが好きだ。
黒澤監督の死生観が如実に現れているような気がする。
★★★★★ 2004-09-28 不当に評価の低い映画
黒澤氏が見た夢を映像化したもの。
「ストーリーが分からないから面白くない」という、
アホみたいな評価をした評論家もいたそうだが、
人間の夢とは本人以外には分からなくて至極当然。
『夢』にストーリーを求めるのは本末転倒である。
『トンネル』だけは、他の7編とは明らかに異質。
ストーリーもしっかりしており、涙無くしては観られない感動作。
個人的にはこれがベスト。だが、他の件も甲乙つけがたい。
全編を通して、『クロサワ』だからこそ撮れた作品だと、感心させられた。
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